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メガネ屋と建築のはなし。 —後編—

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前回は「kearny」の直営店を作るうえでの大事にしたいことや、現在の「sost.」のデザインが決まるまでの波乱万丈のプロセスについてお伺いしましたが、続きとなる後編では、語りきれなかったこだわりポイントやこれからの「sost.」について話していただきました。 「石」「機械」…欠かすことのできないキーワード — では、ここからは事前に富士喜さんに伺っていたいくつかのキーワードについてお伺いしたいのですが、まず「石」というのはどこで使われていたのでしょうか? 熊谷  トイレの中です。 — え!トイレあったんですか?当初の図面にはなかったような…。 熊谷  本当にそれも後からだったんだよね。 菅原  前に入っていたお店ではトイレを入れていなくて、このスペースを物置にしていたんです。でも、実際に物件を開けてみたら排水と給水の設備がちゃんとあったんですよ。 熊谷  展示会をやっているときに、トイレがないことがこんなに辛いんだって身をもって体感ましたね。それで、入り口のデザイン変更と同時進行でトイレもつけてくださいってお願いしました。 — なるほど。トイレの個室には丸っこい石が敷き詰められて、可愛らしい印象に仕上がっていますね。「石」をモチーフにされたのはどうしてですか? 熊谷   次の「kearny」のコレクションが「石」をモチーフにしたメガネを作っていて。それは最初に伝えてあったので、いろんなタイルのサンプルとかを持ってきてもらって一緒に選んで決めました。 菅原   本当にたまたま石をスライスしたようなタイルが建材であったんです。面白いですよねという話をしてスムーズに決まりましたよね。 熊谷  あの石の形でメガネも全然作れちゃうんですよ。レンズの形だから、ほとんど。だから感覚的にトイレに入ったとして、メガネのレンズの形になっているというのが面白いなって思って。 — アーチといい、少しずつメガネを連想させる要素が散りばめられているんですね。では、「機械」というのはどういうポイントでしょうか? 熊谷  それは検査機械のことですね。どうしてもこれらがあるというのは、内装や建築の視点ではマイナスになってしまうと思ったので、入り口から見えないようにとか置く位置というのは全体の設計を考える上で意識してもらいました。 「sost.」ができてからとこれからのこと — 一つ一つのキーワー

メガネ屋と建築のはなし。 —前編—

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「sost.」のオーナーであり、「kearny」のデザイナーの熊谷富士喜と店舗デザインを担当した建築家の菅原浩輝さんをお迎えして、「sost.」ができるまでのお話を対談形式でお届けします。 「kearny」直営店への道のり — 直営店のお話はいつ頃からあったんですか? 熊谷  いつかは…とは思いつつも、具体的に考え始めたのは去年くらいから。「kearny」はこれまでずっと卸しメインで運営してきていたし、いわゆる王道のメガネ屋さんをやることに対して、正直なところあまりポジティブではなかったんです。それでも作ろうと思ったのは、日々いろんなところでポップアップをさせていただく中で、メンテナンスを求める声が多くて。僕自身、ブランド立ち上がりから多くの方にメガネを使っていただく中で、メンテナンスの場所がないというのは、販売していても、デザインしていても引っかかっていたんですよね。だから、ここでフルラインナップをみてもらいたいというよりも、「kearny」を使ってくださっている方達がいつでも持って来れるような場所を作りたいという気持ちでお店を考えるようになりました。 — 単純にお店を作りたいというのではなく、すでに使ってくれている人たちがより長く使えるように? 熊谷  今はアパレルや雑貨屋さんでの販売が多いので、度を測り直したかったり、困った時に相談できる場所がないのは不親切なブランドだなって自分でも思っていて。祐天寺の「feets」や「steef」も技術者がいなかったので、全てを対応することはできない。だからこそ、技術者にちゃんと仲間になってもらうことで、使ってくれる方の満足度を上げたいし、自分たちも安心して販売できるような場所を作りたいと思ったのが始まりですね。 — フランスのメガネ屋さんの空気感からインスパイアされたそうですが、具体的にはどのような部分に惹かれたんですか? 熊谷  ヨーロッパってビスポーク文化が根強く残っているんです。例えば、洋服だったらテーラーで身体に合わせて採寸して仕立てるとか。メガネも同様で、僕が実際に訪れたメガネ屋さんは、店内にはメガネが一本も並んでいなくて、個室で職人さんと向かい合って、顔を見ながら目の前でデザインを描いてくれて、「もう少しここは削りたい」とか「ここはもう少し膨らませたい」とかそういう希望を話し合いながら決めていくお店だったんです